政治経済のジェンダーバランスを考える(1)
Posted by 22.10.16

これから数回のコラムでは、ジェンダーバランスについて焦点を当ててみたいと思います。

 

日本は、2022年度のジェンダーギャップ指数は146カ国中116位と、先進国の中で最低レベルという低迷ぶりですが、その背景にはどのような問題があるのでしょう。また、ジェンダーギャップの少ない国はどのように男女平等・同権を推進してきたのかを取りあげていきます。

 

 

 

2022年ジェンダーギャップ指数ランキング 世界トップ10

World Economic Forum:WEF「The Global Gender Gap Report 2022」Gender Gap Index:GGI 世界経済フォーラム 世界の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(2022年7月)

 

 

 

 

 

世界ではどんどん女性がトップリーダーに!

 

このところ政権交代の選挙の度に、女性候補者の存在が話題になっています。2022年5月、フランスのマクロン大統領が30年ぶり・2人目の女性首相に、エリザベット・ボルヌ氏を任命しました。

 

9月には、英国のリズ・トラス氏が3人目の女性首相に就任。 英国女王エリザベス2世に任命された最後の首相となりました。さらに、イタリアではジョルジャ・メローニ氏が初の女性首相となる見通しです。リズ・トラス氏、ジョルジャ・メローニ氏はともに40代、若き女性のトップリーダーが誕生しました。

 

英国のリズ・トラス首相

 

イタリアのジョルジャ・メローニ 氏

 

 

現在、世界196カ国で、大統領18名・首相19名、あわせて37名の女性のトップリーダーが在任中です。そのうちの約4割が、ヨーロッパに集中しています。

 

ジェンダーギャップ指数世界トップ10の上位を占めるアイスランドやフィンランドなど北欧・東欧を中心にヨーロッパ50カ国のうち15カ国で、女性首相または大統領が在任しているのです。(2022年10月現在

 

 

 

 

閣僚のジェンダーバランスこそ重要!

 

私がより注目しているのは、女性が国のトップに就くことではなく、閣僚の男女比です。昨今の先進諸国では大統領や首相が就任して最初に行うことが、実は閣僚の男女比を等分に近づけることなのです。

 

2015年に政権交代を果たしたカナダのトルドー首相は、まず、閣僚30人を男女同数にし、男性15名・女性15名の新内閣を発足しました。記者からその理由を尋ねられたトルドー首相は、「Because it’s 2015! (だってもう2015年だから!)」と答えたそうです。以降、2019年の総選挙を経た現在も「強く多様で、経験豊富なチーム」男女同数(男性18名・女性18名)の内閣を維持しています。

 

2015年11月4日 トルドー首相と新内閣(オタワ リドーホールにて)

 

 

カナダをはじめニュージーランド、スペイン、フィンランドなど先進諸国に限らず、ジェンダーバランスのとれた内閣をつくる動きは開発途上国でも進んでいます。ルワンダの女性閣僚は53.6%、女性下院議員は61.3%と女性議員の割合は世界1位です。

 

UN Women(国連女性機関)の2021年度データによれば、女性が閣僚の50%以上を占める国は13カ国、40%以上では30カ国となっています。ちなみに、現在の日本の女性閣僚の割合は10%という最低レベルであり、これは国連加盟国192カ国中151位です。ちなみに2020年から38位も下がっています。

 

下の表で分かるように、女性閣僚の割合が50%以上の上位13カ国の中で、先進国・開発途上国がそれぞれ約半数となっています。開発途上国のニカラグアは女性閣僚の割合で第1位となっていますが、その要因は政権が男女平等を強行に進めたため、6位のルワンダは内紛によって多数の男性が死亡したためと、国によっては特殊な事情もあるようです。これらの国々が今後どのようになっていくのか非常に興味深いところです。

 

 

 

 

 

 

 

世界最低レベルの日本

 

 

最後に日本の現状に目を向けてみましょう。

日本のジェンダーギャップ指数が低い最大の原因は政治分野にあります。政治分野のジェンダーギャップ指数は、①国会議員の女性比率、②閣僚の女性比率、③過去50年間の女性元首、の3項目から計算されます。2022年の政治分野のジェンダーギャップランキングで日本はなんと146ヶ国中139位です。女性閣僚の割合は10%という最低レベルであり、日本より低い国はたった7カ国しかありませんから、もはや最低レベルといっても過言ではないでしょう。

 

 

それでは何故、日本はこのような最低レベルなのでしょうか。

1つめに、日本政府の女性活躍促進施策に問題があるといわざるをえません。2003年、日本政府は、ポジティブ・アクションの取り組みの1つとして「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度になるよう期待する。」という目標を掲げました。しかし、まったく進展のないまま2020年を迎え、さらに目標を2030年に先送りにして現在に至っています。原因は、具体的な取組が示されなかったことです。

 

2つめは、日本国民全体が多様性に対して意識が低いことも背景要因だと思われます。日本人は変化を望まない傾向があるとしばしば指摘されてきました。女性の政治家を積極的に増やすために、ジェンダー・クオータ制(格差是正のため、女性に一定比率を割り当てる制度)やポジティブ・アクション(男女差を積極的に解消する施策)を取り入れることへの抵抗は、一貫して強いものがあります。これまでのまま、年配の男性に政治を任せておけばよいという意識が根強く日本社会に蔓延しているのかもしれません。

 

3つめは、2つめの変化を望まない国民性に加えて、女性候補者が当選し難い男性中心の風土にあります。選挙活動では現役候補者(殆どが男性)が有利であることや、後援会メンバーの多くがそもそも地元の年配男性を中心としていることから、女性候補者にとっては当選すること以上に、立候補すること自体も非常に困難なのです。また、女性の候補者が少ないことも事実であり、内閣府の調査では「家事や育児と両立が困難」と考える女性が多いことが背景にあると指摘しています。皆さんの中には、無理に女性政治家を増やす必要はないのではないかと、考える人もいるかもしれません。

 

 

次回は、「政治分野で何故ジェンダーバランスが必要なのか」について取りあげます。

 

Categories: COLUMN

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