サビカスが影響を受けた構成主義心理学者 vol.3
Posted by 22.01.25

3回目の今回は、「人生の意味の心理学」などで注目されているアルフレッド・アドラーです。

 

アドラーといえば、フロイト、ユングと並び「心理学の三巨頭」と称されている心理学者です。

精神分析を創設したジグムンド・フロイトと一時期共に活動していたことから、精神分析家と思われることも多いのですが、その考えは構成主義に近いといわれています。「認知行動療法と構成主義心理療法」(マイケル・マホーニー編)という本の中でドナルド・マイケンバウムは、構成主義的な視点の起源について以下のように記述しています。

 

 

構成主義的な視点は、人はその個人的現実を積極的に構成し、世界についての自身の表象モデルを創造するという考え方に基づいており、次のものに起源がある。

 

哲学者ではイマニュエル・カント、エルンスト・カッシーラー、ネルソン・グッドマン、心理学者ではヴィルヘルム・ヴント、アルフレッド・アドラー、ジョージ・ケリー、ジャン・ピアジェ、ヴィクトール・フランクル、ジェローム・フランクらによる著作である。

 

さらに最近では、エプスタインとアースキン(1983)、マホーニーとリドン(1988)、マッキャンとぺリマン(1990)、ニーマイアーとフェイシャス(1990)、マイケンバウム(1990)、ホワイトとエプストン(1990)によって唱えられている。

 

これらに共通することは、人の心は構成主義的な象徴的活動の産物であり、現実は人が創造する私的な意味の産物だという主張である。

 

Alfred Adler(1870-1937) オーストリアの精神科医。1902年からフロイトのウィーン精神分析協会の中核的メンバーとして活躍したが、1911年に学説上の対立から脱退した。フロイトと決別後、自らの理論を個人心理学(Individual psychology)と呼び、全体論、目的論などを特色とする独自の理論を構築した。ナチズムの台頭に伴い、活動の拠点をアメリカに移し、精力的な講演、執筆活動を行ったが、講演旅行の途次、アヴァデーンで客死した。(「人生の意味の心理学(上・下)」著者紹介より)

 

 

サビカスは、自分のアプローチの理論的根拠がアドラーの個人心理学とスーバーの理論にあると述べています。また、「アドラー派のカウンセリングと心理療法」(Adlerian Counseling and Psychotherapy, Sweeney, 2019)という本の中で、“Career Style Counseling” と題する章を担当し、自らがアドラー派のカウンセラーであることを表明しています。

 

アドラーは1931年に出版した「人生の意味の心理学(上)」の冒頭で、次のように構成主義的な見解を述べています。

 

われわれは現実を常にわれわれがそれに与える意味を通じて体験するのである。

つまり、現実をそれ自体として体験するのではなく、何か解釈されたものとして体験するのである。

 

 

 

 

サビカスがアドラーの個人心理学から具体的にどのような影響を受けたのかについて、以下の2点を推測します。

 

アドラー「早期回想」、サビカスの「人生の最初の記憶」

 

1つめは、サビカスがキャリアストーリーインタビューの最後に行う質問「人生の最初の記憶」がアドラーの早期回想についての考えと類似している点です。著書「人生の意味の心理学(上)」第4章でアドラーは、早期回想が「私の人生の物語」を表すものと位置づけ、その重要性を以下のように説明しています。

 

・子ども時代から回想される出来事は、人の主要な関心に非常に近いに違いない。この主要な関心を知れば、その人の目標と個人的なライフスタイルを知ることになる。職業の指導において、早期回想が重要になるのは、この事実である。

 

・すべての中でもっとも明らかにするのは、物語、思い出せる最初の回想をどのように話し始めるかである。最初の回想は、人の人生についての根本的な見方、態度の最初の満足のいく表現を示すだろう。それは、人が発達の出発点として何を取ったかを一目で見ることを可能にする。私は、早期回想をたずねないで人について調べることはないだろう。

 

一方、サビカスは幼い頃の記憶について、クライアントが直面している中核的な問題、つまり不安などの否定的な感情を明らかにすると述べています。そこから主要なライフテーマが浮かび上がり、ライフストーリーの筋書きまたはシナリオが示されると考える点はアドラーと共通しています。

 

 

 

 

アドラー「劣等感の克服」、サビカス「短所が長所に転換される」

 

2つめはアドラーもサビカスも、ともに「劣等感・弱点」を克服することで人が成長する可能性を強調している点です。アドラーといえば劣等感というように、劣等コンプレックはアドラー心理学の中心的テーマを代表する言葉として有名です。劣等コンプレックスについて、「人生の意味の心理学(上)」では以下のように記されています。

 

・われわれの文化に貢献した人の多くが、人生を始める時、器官劣等性(organ inferiority)を持っていた。かれらは健康ではなく、早世した人もあった。身体的にも環境的にも、困難と一生懸命闘った人が、もっぱら進歩と発明をもたらしたのである。闘いがかれらを強くしたのであり、そういう経験がなかった時よりも、ずっと先まで進んで行ったのである。

 

 

サビカスは、短所が長所に転換されるということについて、著書「サビカス キャリア・カウンセリング理論」の中で、次のように説明しています。

人は、ナラティブ・アイデンティティに着手する契機である欠陥を修正しようと努力する。心の内部の暗闇から外界の光を目指して動くとき、人は、恐怖、限界、障害、心の傷と格闘する。そのうちに、人は、いかにして逆境を乗り越え自らの欠点を克服し、以前よりも向上した何かになるかを学んでいく。

 

 

 


 

 

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